コーラン第29章アンキャブート章蜘蛛(2)
今回のこの時間も、コーラン第29章アンキャブート章蜘蛛を見ていくことにいたしましょう。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
アンキャブート章の節には、以前の預言者やその民の厳しい試練の一部が述べられています。そしてそれは、ヌーフという偉大な預言者で始まり、次のように述べています。
「我々はヌーフをその民のもとに遣わした。彼は夜に昼に人々を唯一神の信仰へといざない、950年の間、人々を神へと導き、そのような努力に疲弊することはなかった。それでもなお、わずかな数の人を除いて、彼に信仰を寄せる者はなかった」
その後、神の偉大な預言者、イブラヒームの物語が続きます。
アンキャブート章第16節です。
「[思い出すがよい。]イブラヒームがその民に言ったときのことを。『唯一の神を崇拝し、彼を畏れなさい。それはあなた方にとってよりよいことである。もしあなた方が知っているならば』」
預言者イブラヒームは、自らの民に、このように忠告しています。「あなた方が崇拝する偶像は、理性も意志もない偶像に過ぎない。それらはあなた方の日々の糧の所有者ではない。真の創造主は唯一の神である。だから日々の糧を、神のみから求めなさい」
しかし、イブラヒームの民の答えはこのようなものでした。「彼を殺すか焼いてしまおう」
しかし、神はイブラヒームを炎から救いました。
アンキャブート章の節は、預言者イブラヒームの物語を述べた後、彼と同じ時代の預言者、ルートの運命の一部を明らかにしています。ルートの民は、同性愛者で、著しい道徳的な退廃に陥っていました。ルートは神から、彼らの逸脱と堕落を防ぎ、正しい道に導くよう命じられました。コーランはそれについて、アンキャブート章第28節と29節で次のように語っています。
「また、[思い起こしなさい。]ルートがその民に言ったときのことを。『あなた方は非常に醜い行いをしている。世界には、そのような行いであなた方を上回る者はいない。あなた方は男性を追い求め、道を断つのか? そして公の場でふさわしくない行いをするのか?』」
しかし、ルートの民の答えは次のようなものでした。「あなたが本当のことを言っているのなら、神の責め苦を私たちに見せてほしい」
結局ルートは、何もできないことを知ると、神に向かい、悲しみに沈んだ心で言いました。「神よ、この堕落した民に対して私を助けてください」
このことは、アンキャブート章第30節に述べられています。
ルートの民は、このような堕落に陥っていました。彼らは公の場で公然と醜い行いをし、彼らの腐敗や堕落を妨げるものは何もありませんでした。しかしついに、ルートの祈りが叶えられました。責め苦を下す役目を負っていた天使たちが、美しい若者の姿でルートの前に現われました。ルートは最初、天使たちの正体が分からず、彼らを見て悲しみに沈みました。なぜなら、そのような穢れた環境に、そのような美しい客人がやってくれば、悪い結果が待っていたからです。その客人たちは、ルートの悲しみを理解し、自分たちの正体を明かしました。アンキャブート章の第33節と34節には次のようにあります。
「彼らは言った。『恐れたり、悲しんだりすることはない。私たちはあなたとあなたの家族を救うだろう。あなたの民の中に残るあなたの妻を除いては。私たちはこの町の人々が堕落と罪に走ったため、天から責め苦を下す』」
次の節は、醜い行いをしてきたその民の運命に触れています。
「我々はその地に、考える人々のために明らかなしるしを残した」
ルートとその民の物語の後、アンキャブート章は続けて、シュアイブの民、アードの民、サムードの民、フィルアウンなどについて述べています。彼らは皆、神から責め苦を下されました。これらの節は、彼らが責め苦を下された理由を明らかにし、このように述べています。「悪魔が彼らの行いを、彼らの目に美しく見えるようにし、彼らを神の道から逸脱させた」
フィルアウン、ガールーン、ハーマーンは皆、悪魔の力の明らかな例でした。しかし、その誰一人として、神に優ることはなく、責め苦から解放されることはなかったのです。
アンキャブート章の第40節は、彼らは皆、自らの行いの結果を味わったのであり、その収穫物の種は、自分でまいたものであったとし、次のように語っています。
「神が彼らに圧制を行ったのではない。彼ら自身が、自分に対して圧制を行っていた」
神は、圧政的で頑で高慢な人々や多神教徒の痛ましく悲しい運命を述べた後、第41節で、神以外のものを拠り所とし、崇拝する人々に関して興味深い例を挙げています。
「神以外のものを自らの保護者とする人々は、自分のために巣を作る蜘蛛と同じである。蜘蛛の巣は最も脆い家である。もし彼らが知っていたならば」
何と興味深い例でしょうか。私たちは、どんな動物や昆虫でも、自分のために家や巣を持っていることを知っています。しかし、それらのうち、蜘蛛の巣ほど脆いものはありません。家というものは、そこに住む人が様々な出来事から守られるよう、壁や屋根、扉があるべきです。しかし、蜘蛛の巣は、何本かの非常に細い糸で作られており、壁もなければ、屋根も扉もありません。また、その材料は蜘蛛の糸という非常に脆いものであり、何かがあれば耐えることはできません。穏やかな風が吹いただけで、その糸はもつれ、崩れてしまいます。雨が降れば、崩れてしまうでしょう。
蜘蛛の巣は、他の動物や昆虫の巣と比べて、非常に弱々しく頼りないものです。神以外のものを拠り所とし、崇拝する人々は、実際、蜘蛛の巣、つまり弱々しく頼りないものを拠り所としているのと同じです。彼らの拠り所は脆く、信頼できず、様々な出来事や強風に抵抗することができません。しかし、信仰を寄せ、神を支えにする人々は、鋼のような強固な拠り所を持っているのです。