モハッラム月のナズリー
イランのイスラム教徒は、毎年、イスラム暦のモハッラム月が巡ってくると、シーア派三代目イマーム、ホサインとその教友たちの殉教を追悼する儀式を行い、敬意を払います。
特に、この月の最初の10日間はイランの各市町村はその様相を変え、黒い服を着た団体が、黒い旗を掲げて町を練り歩いたり、集会を開いたりして、殉教者の長であるイマームホサインを追悼します。特に、モハッラム月の9日目のタースーアー、10日目のアーシュラーには町は様変わりし、多くの人が関連の儀式に参加するために外出します。
イマームホサインの追悼儀式では、儀式に参加している人々を持て成す習慣があります。季節や気候にあわせて、紅茶、ホットミルクなどの飲み物やナツメヤシが振る舞われます。中には、好意で、昼食や夕食を参加者のために作る人もいます。
タースーアーやアーシュラーの日には、料理の入った大鍋が町中で見られ、これらは、慈善の精神を持った人々が用意したものです。この二日間は、モスクなどの宗教施設や一部の住宅で大きな食卓が用意され、人々に料理が振る舞われます。(このように宗教行事で、無料で料理を振る舞うこと、またその料理をイランでは「ナズリー」と呼んでいます)
また、多くの人がナズリーとして屋外で料理を配ります。タースーアーやアーシュラーの日には料理をする家は少なく、多くの人が儀式に参加し、料理を受け取ります。
モハッラム月に、ナズリーとして用意される料理は、この「イランの食文化」でも、以前ご紹介したことのある煮込み料理ゲイメ、フェセンジャーン、そしてゴルメサブズィー(豆とハーブの煮込み料理)の他、チェロキャバーブ、アダスポロ(レンズ豆の炊き込みご飯)、アーシュ、ハリーム(小麦の煮込みスープ)、デザートのショレザルド(サフラン風味のライスプティング)などが一般的です。
イランの各地では、その地域の風土や慣習によってナズリーも異なります。例えば、カスピ海沿岸の北部の町では、揚げ魚とハーブ入りご飯がセットでよく出されます。また南部では、肉入りスープや魚の煮込み料理の他、「ランギナック」と呼ばれるナツメヤシ入りの砂糖菓子が並べられます。
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